相談
子どもの漢字練習で、何回書かせればいいのかわかりません。学校の宿題は「10回ずつ」ですが、それで覚えているようには見えません。何回書けば、覚えられるのでしょうか。
塾長の聞き返し
その「何回」は、手本を見て書き写した回数ですか? それとも、見ずに思い出して書いた回数ですか?
……書き写した回数だと思います。
塾長の答え
1. 数えるのは、「思い出した回数」です
何回書けばいいか。これは、人によります。 ただ、はっきり言えることがあります。書いた回数ではなく、「思い出して書いた回数」が多いほど、記憶に残ります。
大事なのは、回数そのものではありません。定期的に思い出すことです。そして、それを仕組みにしてしまうことです。ことばこでは、プリントとテストを、そのように設計しています。第13問でお話しした、リトリーバル学習です。
2. 漢字が得意な子は、勝手に思い出しています
漢字が得意な子と、苦手な子。違いは、思い出す回数です。それだけです。
得意な子は、リトリーバル学習を知らなくても、勝手にやっています。 自分で自分に、テストを出しているのです。書かなくても、頭の中でできます。
囲碁や将棋に慣れてくると、盤面を頭の中で思い浮かべられるようになります。あれと同じです。頭がいいからというより、ずっと、頭の中で思い出す練習をしてきたからできるのです。「今日はこうだったな」と、何度も思い返してきたから、だんだん思い浮かべられるようになります。
3. 学校の宿題が「10回ずつ」のときは
学校の宿題は、学校の方針です。基本的には、合わせてやっていくことが大事だと思います。 社会と同じで、付き合いがあります。上司の言うことに、少し疑問があっても、無視はしませんよね。それと近いです。
ただし、無意味なことを、とても大事なことのように言うのは、おかしいと思います。ですから、お子さんには、こう伝えてください。宿題を出すことは、大事。でも、覚えるためには、やり方がある。
賢い子は、10回書くにしても、ただ書き写しません。覚えたければ、見ずに、次の1文字を書けるかどうか試します。 出すだけの宿題だと、みんな、ただ書き写して終わりになりがちです。そこは、正直どうかなと思いますが、仕方ない面もあります。
4. お母さんがやりがちなのは、「書き写しの繰り返し」です
漢字の練習で、お母さんが一番やってしまうこと。それは、何回も書かせることです。学校の宿題と同じです。書き写しを、繰り返させてしまいます。
これは、お母さんが悪いのではありません。ご自身が、そうやって覚えてきたからです。 私の実感ですが、学校でがんばってきた人ほど、時間をかけて、まじめに宿題をやって覚えてきた方が多いと思います。短い時間で覚えるやり方を、教わる機会がなかったのです。そのやり方が、いい方法だと思って、お子さんにも伝えています。先生方も、親御さんも、同じです。悪気はなく、自分が成功した方法を、伝えているだけです。
最後に
今日からできることは、三つです。
- 「何回書いた?」ではなく、「見ないで何問書けた?」と数える
- 学校の宿題は、付き合いつつ、見ずに書けるか試しながらやる
- 回数ではなく、定期的に思い出すことを、仕組みにする(第14問の「1問→3問→10問」)
勉強ができること以上に大事なのは、「自分には、課題を乗り越えていける力がある」という自信です。アドラー心理学では、この力を支えることを「勇気づけ」と呼びます。「見ないで書けた」という経験が、「自分にもできる」という実感になります。
塾長コラム ─ 学習塾ことばこ 塾長(国語科教員10年・学習塾個別指導12年)