相談
計算プリントに「何分以内」という時間制限があると聞きました。焦ってミスが増えそうですし、プレッシャーで嫌いになりそうで心配です。正しく解けていれば、時間はかかってもいいのではないでしょうか。
塾長の聞き返し
たとえば、8+5を、指で数えて答えを出しているとします。答えは合っています。でも、それで「できる」と言えるでしょうか?
……パッと出ないと、あとで困りますね。
塾長の答え
1. 計算は、速くできなければ意味がありません
はっきり言います。計算は、速くできなければ、意味がありません。 8+5が13と、パッと出る。そこまで練習する必要があります。
時間をかけてよければ、指で数えてもできます。でも、それでは、次の単元に進んだときに、計算に頭を使い切って、考える余裕がなくなります。 ですから、計算は、「パッと出る」ところまで、練習します。
2. 制限時間が、やり方を決めてくれます
「速くやりなさい」と言うだけで、「指で数えるのはやめなさい」と、やり方まで一つひとつ注意されたら、どうでしょう。せっかく合格したのに、やり方にケチをつけられては、子どもも困ります。
そこで、時間制限をつけます。 制限があれば、子どもは自分なりに、どうすればクリアできるかを考えます。制限が、自然に、勉強のやり方を決めてくれるのです。
ですから、勉強の仕方まで決めてくれるプリントを、つくる必要があると、私は考えています。最初から、そういう設計になっていれば、子どもは自動的に、そのルールの中で努力します。
3. 途中でルールを変えない
ルールが、先生の言い方しだいで変わると、子どもはやる気をなくします。言ったり言わなかったり、OKだったり、OKでなかったり。途中で、ルールが変わることが、やる気をなくすきっかけになりやすいのです。
これは、ご家庭も同じです。「今日はいいよ」と言ったのに、「明日はだめ」。毎回ルールが変わっては、子どもは何を目指せばいいのか、わかりません。ですから、ことばこでは、人の気分ではなく、プリントの設計で、すべてをコントロールしています。スポーツに近い感覚です。
4. 焦ってミスは、増えます。だから、合格するまで繰り返します
時間を計れば、焦って、ミスは増えると思います。それは、そうです。だから、合格するまで、何回も繰り返すのです。
「10枚を解きなさい」と言われたら、だらだらやりがちです。でも、「この時間内に解けるようにしなさい」と言われたら、一生懸命、何回も何回もやって、やっとクリアできる。同じ10枚でも、取り組む気持ちが、まったく違います。 時間を計ることで、子どもは「挑戦」するようになります。
5. 計算が遅い子は、戻ってやり直します
計算が遅い子は、まず、できるところまで戻ります。 たいていは、足し算、引き算からです。そこが速くできるようになってから、先に進みます。
そして、時間を縮める前に、イメージをつくることが先です。たとえば、8+5なら、おはじきを使って、「8に2を足して10。残りの3を足して13」というイメージを、一緒につくってあげます。イメージができたら、あとは練習を、繰り返す、繰り返す、繰り返す。 繰り返せば、できるようになります。そして、速くできるようになったら、次に進みます。
問題は、まだ習得できていないのに、先へ進んでしまうことです。学校は、どんどん次の単元に進みます。「こういうものがありますよ」と紹介してくれるだけで、習得できていなくても、進んでしまいます。「できたら進む」プリントでなければ、一人ひとりのサポートには、なりません。
6. 教えることは、簡単です。大事なのは、練習です
こう言うと驚かれるかもしれませんが、教えることの価値は、とても小さいと、私は考えています。
たとえば、「こう振ればホームランが打てます」と教わっても、打てるようにはなりませんよね。教わる価値が「1」なら、それを練習する価値は、「9999」くらいあります。これは数字で測ったものではなく、私の実感ですが、勉強も同じで、練習のほうが、ほとんどだと思っています。
やり方の説明は、ネットにも、動画にも、いくらでもあります。大事なのは、練習して「できるようになる仕組み」を、設計しているかどうかです。
7. 家で時間を計るときの、お母さんの注意点
家で時間を計るなら、その場その場で、ルールを変えないことです。そのために、このプリントは、どのくらいの時間でできればいいのかという基準が、最初から必要です。その基準が、客観的でないと、子どもに不満が出ます。「なんで、こんなに早くやらなきゃいけないの」と。
お母さんの気分で決めた時間ではなく、最初から決まっている基準を使ってください。(ことばこの計算プリントは、1枚ずつ、すべて基準の時間が決まっています。)
最後に
今日からできることは、三つです。
- 計算は、「パッと出る」まで練習する(指で数えて合っていても、まだ途中)
- 時間を計るなら、最初から決まった基準で。途中でルールを変えない
- 遅い子は、できるところまで戻って、イメージをつくってから、繰り返す
勉強ができること以上に大事なのは、「自分には、課題を乗り越えていける力がある」という自信です。アドラー心理学では、この力を支えることを「勇気づけ」と呼びます。「前より速くなった」「基準の時間に届いた」。その実感が、「挑戦すれば、自分にもできる」という自信になります。
塾長コラム ─ 学習塾ことばこ 塾長(国語科教員10年・学習塾個別指導12年)