中学3年 国語科 教材別テスト⑧「誰かの代わりに」模範解答・解説
教材別リメイク版 中学3年 国語 / 鷲田清一・光村図書『国語3』
【このテストの使い方】 本文は載せていません。教科書『国語3』の「誰かの代わりに」のページを開いたまま解答します。筆者は哲学者で、「自分らしさとは何か」を問う論説文です。この教材の山は、「自分らしさは自分の内側を掘っても見つからない。他者との関係のなかで形づくられる」という考えの転換です。選択問題で論の流れをたどり、記述問題でこの転換を自分の言葉にする練習をしてください。記述は、字数のあとに( 字)を示しています。句読点も一字と数えます。
配点一覧
観点大問内容配点
知識・技能
50点
一漢字の読み書き(20問)1点×20=20点
二語句の知識(論説文の語彙・対義語・四字熟語・慣用句)2点×7=14点
三文法の総まとめ(品詞と用法の識別)2点×8=16点
思考・判断・表現
50点
四「誰かの代わりに」の読解(10小問)50点
合計100点
【出題のねらい】 ① 論説文の抽象語(アイデンティティ・漠然・抽象・逆説・責任など)を正しくつかめているか。
② 十品詞の識別と、「ない」「の」「だ・な」「られる」の用法の識別、自立語・付属語、活用の有無を整理できているか。
③ 現代の若者が「本当の自分」を内側だけに探して行き詰まるという、筆者の問題提示をとらえられるか。
④ 「自分らしさは他者との関係のなかで形づくられる」という筆者の考えの転換を、記述で言葉にできるか(最重要)。
⑤ 「責任=応答」の語源説明や、介護・看護・育児の例が、論のなかでどんな働きをしているかを説明できるか。
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一 漢字の読み書き (1点×20=20点)
番号解答番号解答
①もさく⑪主体
②かっとう⑫構造
③きせい⑬比較
④りんかく⑭交換
⑤ゆだ(ねる)⑮感謝
⑥こうてい⑯要求
⑦にな(う)⑰信頼
⑧おちい(る)⑱受け入れる
⑨うなが(す)⑲貴重
⑩たが(い)⑳唯一
小計 20点
【注意したい字】 ②「葛藤」は「かっとう」。「かつとう」と小さい「っ」を書き忘れる誤りが多い。③「既成」は「すでにできあがっている」意。「規制」「既製」との書き分けに注意。④「輪郭」の「郭」を「廓」「殻」と書かない。⑤⑦⑧⑨⑩⑱は送りがなまで必要(⑩は「互い」の「い」、⑱は「受け入れる」)。⑧「陥る」は「おちいる」。「おとしいる」は他動詞「陥れる」。⑬「比較」の「較」はくるまへん。「比教」「比郊」は誤り。⑭「交換」の「換」はてへん。「交替」と混同しない。⑰「信頼」の「頼」を「頻」「類」と書かない。⑳「唯一」は「ゆいいつ」。「唯」を「准」「推」と書かない。
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二 語句の知識 (2点×7=14点)
番号解答解説
(1)イ「アイデンティティ」=自分が自分であるという自己同一性。身分証の意味で使われることもあるが、この文章では「自分が自分であるという確かさ」の意。アは「役割」、ウは「序列」で別語。
(2)ア「漠然」=ぼんやりしてとらえどころがないようす。「漠然とした不安」の形でよく使う。対になる語は「明確」「具体的」。
(3)ア「抽象」=個々の具体的なものから共通する性質を取り出して、まとめてとらえること。対義語は「具体」。論説文では、具体例と抽象的なまとめを行き来して読むことが大切になる。
(4)依存自立 ⇔ 依存。「他立」は語として使わない。「孤立」は意味がずれるので誤り。
(5)一般(普遍・普通も可)特殊 ⇔ 一般/普遍。論説文では「特殊 ⇔ 普遍」の対が頻出。「特別」は類義語なので誤り。
(6)錯「試行錯誤」。何度もためして(試行)、まちがえながら(錯誤)答えに近づくこと。「索」「作」と書かないこと。
(7)粉「身を粉(こ)にして働く」=自分の身をこまかい粉にするほど、骨身をけずって働く。「身を削る」と混同して「削」と書く誤りが多い。
小計 14点
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三 文法の総まとめ(品詞と用法の識別) (2点×8=16点)
番号解答解説(見分け方)
(1)カ(連体詞)「ある日」の「ある」は活用せず、体言だけを修飾するので連体詞。動詞「有る/在る」と見まちがえやすいが、「ある日」は「ある日だ」のように言い切れず、「日」にしかかからない。
(2)ケ(助詞)「公園で」の「で」は、それだけでは意味をもたない付属語で、活用しない。よって助詞(格助詞)。活用する付属語=助動詞との区別がポイント。
(3)ウウ「相談できない」=打ち消しの助動詞(直前に「は」を入れられず、「ぬ」に置きかえられる=「相談できぬ」)。
ア「明るくない」=直前に「は」を入れられる(明るくはない)ので補助形容詞。イ「本がない」=「存在しない」の意の形容詞。エ「せわしない」=一語の形容詞で、語の一部。
(4)ウウ「私のだ」=「私のものだ」と言いかえられるので体言の代用。
ア=「考え」にかかる連体修飾。イ・エ=「が」に置きかえられる(風が強い/君が言う)ので主格。
(5)イイ「静かだ」=言い切りの形が「〜だ」で、「とても」で修飾でき「静かな」と変化するので形容動詞の活用語尾。
ア=名詞に付く断定の助動詞「だ」。ウ=過去の助動詞「た」が濁ったもの。エ=断定の助動詞「だ」の連体形「な」。
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三 文法の総まとめ(品詞と用法の識別) (つづき)
番号解答解説(見分け方)
(6)ウウ「思い出される」=自然にそうなる気持ちを表す自発。心情を表す動詞につくことが多い。
ア=受け身(「友人に」=動作主)。イ=尊敬(主語が「先生」)。エ=可能(「〜することができる」と言いかえられる)。
(7)4(つ)「私/は/彼/に/本/を/貸し/た」の八単語。うち付属語は「は・に・を・た」の四つ(助詞三つ+助動詞一つ)。自立語は「私・彼・本・貸し」の四つ。
(8)イ・ウイ「ゆっくり」=副詞、ウ「大きな」=連体詞で、どちらも活用しない。ア「美しい」=形容詞、エ「静かだ」=形容動詞は活用する。イ・ウの二つそろって2点(完答)。一つだけ、または余分に選んだものは0点。
小計 16点 / 知識・技能 合計 50点
【識別の決め手・早見】 ①「ない」…直前に「は」が入る→補助形容詞/「ぬ」に置きかえられる→助動詞/「存在しない」の意→形容詞/切り離すと意味をなさない→語の一部。
②「の」…「が」に置きかえられる→主格/下の体言を修飾→連体修飾/「もの・こと」に置きかえられる→体言の代用。
③「だ・な」…「とても」で修飾でき「〜な」に変わる→形容動詞/名詞に付いて言い切る→断定の助動詞/「〜た」の濁音→過去の助動詞。
④「れる・られる」…動作主に「に」がつく→受け身/「〜できる」→可能/自然にそうなる→自発/主語が敬う相手→尊敬。
⑤自立語か付属語か…単独で意味がわかるか。活用するか…形が変わるか。この二つの軸で、十品詞はすべて分類できる。
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四 「誰かの代わりに」の読解 (50点)
番号解答解説・採点のポイント
(1)
3点
イ筆者の鷲田清一は哲学者(臨床哲学・倫理学などが専門)。この文章は、「自分らしさ」「自分が自分であるとはどういうことか」という問いを立てて進む論説文である。医学・心理学・歴史学の研究者ではない。
(2)
4点
イ筆者はまず現代の問題提示をする。若者は「本当の自分」「自分らしさ」を自分の内側だけにさがそうとするが、掘っても掘っても確かなものに行き当たらず行き詰まる。アは「同調」の話、ウ・エは別の話題。
(3)
5点
(例)他人と比べた優劣や、自分が交換可能かどうかで測ること。(27字)「他人と比べた優劣」(2点)+「交換できるかどうか(代わりがいるかどうか)」(2点)+「〜こと。」の形で文末が整っている(1点)。
どちらか一方だけなら3点。「自分の努力で測る」「成績で測る」など、他者との比較・交換可能性にふれていないものは0点。二十五〜三十五字から外れたら−1点。
(4)
4点
イ「自分は誰かの代わりでしかない」=自分がここにいる意味がないという感覚。これが空虚さ(むなしさ)を生む。アのような「気楽さ」ではないことが分かれ目。
(5)
10点
(例)自分らしさは、他者との関係の中で、誰かに必要とされ、応えていく経験を通して形づくられるということ。(49字)この教材最大の論点。次の三点で採点する。
①「自分の内側を掘って見つかるものではない」という否定、または「他者との関係の中で」という条件(4点)。
②「他者から必要とされる/求められる経験を通して」(4点)。
③「形づくられる・生まれる」という結びと「〜こと。」の形(2点)。
「自分で努力して見つける」「自分を見つめ直す」など内側に向かう答えは、方向が逆なので0点。四十五〜五十五字から外れたら−1点。
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四 「誰かの代わりに」の読解 (つづき)
番号解答解説・採点のポイント
(6)
4点
イ「逆説」=一見矛盾しているようでいて、よく考えると真理をふくんでいる説。この文章では、自分の内側を探るのをやめて誰かのために自分を差し出したとき、かえってかけがえのない自分が立ち現れる、という「代わり」が「かけがえのなさ」に転じる考え方が逆説にあたる(題名の意味)。ア「反対意見」、ウ「まちがった説」、エ「順序を逆にした説」は別の意味。
(7)
5点
(例)責任とは、他者の呼びかけに応えることから生まれるのだと説明するため。(34字)「責任」と「応答(他者の呼びかけに応える)」が結びつくことを示す(3点)+「〜ため。」の形で役割・目的として書けている(2点)。
「英語の勉強になるため」「語源を紹介するため」のように語源の紹介そのものを目的にしてしまったものは0点。三十〜四十字から外れたら−1点。
(8)
4点
イ介護・看護・育児は、人と人とが深くかかわり合い、相手が自分を必要としていることがはっきりしている場面で、こちらが応答して引き受ける関係が最も見えやすい。だから筆者の主張の具体例としてふさわしい。アは社会問題の訴え、ウは「単純な仕事」という誤った評価。
(9)
3点
イ①現代の若者の行き詰まりという問題提示→②「自分らしさは内側にある」という通念の指摘→③その否定→④他者との関係から見る転換した見方の提示→⑤結論。論説文の典型的な「否定から転換へ」の型。
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四 「誰かの代わりに」の読解 (つづき)
番号解答解説・採点のポイント
(10)
8点
(例)部活で後輩の相談役を任され、自分でなければと思えたとき、代えのきかない自分を感じた。(42字)【ルーブリック】
A(8点)…「他者から必要とされた・頼られた具体的な経験」が書かれ、かつ「そのとき自分が取りかえのきかない存在だと感じた」という結びがある。
B(5点)…経験は書けているが、「かけがえのなさ」との結びつきが弱い(例「人の役に立ってうれしかった」止まり)。
C(2点)…「かけがえのない=大切」という一般的な説明だけで、自分の経験が書かれていない。
0点…「自分は特別だから」「人と比べて優れているから」など、他者との比較で優劣をつける答え(筆者の論と逆)。
※四十〜五十字から外れたら−1点。経験の内容は自由(部活・係・家族の手伝い・きょうだいの世話など)で、本文と同じ例でなくてよい。
思考・判断・表現 合計 50点 / 総合 100点
【この教材で落としやすいポイント(8つ)】
  1. 筆者は哲学者。これは体験を語った随筆ではなく、問いを立てて考えを進める論説文である。
  2. 「本当の自分は内側にある」は筆者の主張ではなく、筆者が否定する通念。ここを取りちがえると、記述がすべて逆向きになる。
  3. 不安の正体は、自分の価値を他人と比べた優劣や交換可能かどうかで測ってしまうこと。「努力不足」の話ではない。
  4. 「自分は誰かの代わりでしかない」という感覚が生むのは、気楽さではなく空虚さ。
  5. 最大の論点=自分らしさは内側を掘って見つけるものではなく、他者との関係のなかで、必要とされる経験を通して形づくられるもの。
  6. 「誰かの代わりに」引き受けることが、かえってかけがえのない自分を生む。この逆説が題名の意味である。
  7. 「責任(responsibility)=応答(response)」の語源は、ことば遊びではなく、責任が他者との関係から生まれることを示すための論の支え。
  8. 介護・看護・育児の例は、仕事の紹介ではなく、他者の求めに応答し引き受ける関係が最もよく見える場として挙げられている。
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