相談
「勉強は子どもの課題だから任せなさい」と言われても、放っておいたら本当に何もしません。小学6年生の息子は、学校から帰るとゲームをして、ご飯を食べて、寝るだけです。怒るのをやめて1か月ほどになりますが、何も変わりません。これって、ただの放任ではないでしょうか? 任せたら、このまま落ちていく気がして怖いです。
塾長の聞き返し
「怒るのをやめた」とのことですが、お子さんの今の状態は、お母さんから見えていますか? 何を勉強していて、どこがわからないのか。何も言わない代わりに、何かしていることはありますか?
言わないようにしているだけで、宿題を出しているのかどうかも、はっきりわかっていません。
塾長の答え
1. 怒るのをやめたら、思い通りには動かなくなります
まず、はっきり言います。怒るのをやめたら、子どもがお母さんの思い通りに動かなくなるのは、当然です。
これまで怒ることで動かしてきたのなら、怒りという「動かす力」がなくなれば、動かなくなります。ここは、驚くところではありません。
ただ、動かなくなったわけではありません。お母さんに怒られなくなった子は、自分なりの思惑で、自分なりに行動し始めます。 ゲームをする、動画を見る、友だちと遊ぶ。その思惑の中に、いつ「勉強」が入ってくるのか。
小学生なら、ほとんど入ってこないと思います。学校の宿題が、実際に力がつく形になっていないことも多く、子どもが価値を感じにくいからです。お母さんが怒らなければ、宿題をやらない。それは自然な流れです。
一方で、価値の低い宿題を、怒ってまでやらせることにも、あまり価値がありません。ここには矛盾があります。
2. 必要なのは、「適切な課題・量・タイミング・声かけ」です
では、何が要るのか。
適切な課題を、適切な量とタイミングで与え、適切な声かけで導くことです。怒ってやらせるのをやめて、これに挑戦してみる。それが答えです。
ただし、正直に言います。これは、難しいです。
相手にとって本当に必要で、やりがいを感じられる課題を見つける。それを、ちょうどいい量とタイミングで渡す。うまくいかないときに、叱らずに声をかける。これができれば、親は大きく成長します。
でも、難しいことを、教える側の経験がないまま、親が一人で抱えるのは、おすすめしません。難しいのに親が手を出せば、結局、怒って動かす方向に戻ってしまうからです。
だから、ことばこのような塾に任せるのも、一つの手です。お母さんがやろうとして、うまくいかない部分を引き受けるために、私は塾をやっています。これは営業トークで言っているのではなく、そこにフォローが必要だと思ったからです。
3. 放っておく、と、見守る
お母さんが怖いのは、「放任」になることでしょう。放任と見守りは、違います。
- 放っておく:子どもの状態を把握していない。
- 見守る:状態は把握している。ただ、叱ってコントロールはしない。
見守るときは、状態があまりよくなくても、叱るという手段を使わずに、声をかけて、導こうと努力します。この努力を続ける親は、成長します。
一方、叱るのは、いちばん簡単な方法です。言ってしまえば、暴力で相手を支配することです。自分が強いうちは、それでうまくいきます。でも、そういう国に住みたいでしょうか。そういう親のもとで勉強したいでしょうか。そこには、お互いに、成長がありません。
「叱るか、放っておくか」の二択ではありません。状態を把握しながら、叱らずに、寄り添う。 この三つ目の道があります。
アドラー心理学の「課題の分離」は、「その選択の結末を最終的に引き受けるのは誰か」で、誰の課題かを分けるものです(古賀・岸見、2023)。勉強は、お子さんの課題です。ただし、それは「親は何もしなくていい」という意味ではありません。
4. 見守るだけで動く子は、いません
ここまで読んで、「それなら、見守っていれば動くのか」と思われたかもしれません。
正直に言います。ただ見守っているだけで動く子は、いません。
だから、ことばこでは、仕組みを提供しています。 「どうすれば自分は成長するのか」という枠組みを、お子さんに渡すのです。
たとえば、プリントを1枚やって、クリアする。次の2枚目をやって、クリアする。3枚目。レベル別に、決まった次のプリントがあります。やっていくうちに、「これをやれば、自分はここにたどり着けるんだ」というイメージが持てます。それぞれの教科で、自分が今どのくらいできていて、それにどのくらいの価値があるのかが、自分で感じられるようになります。
この状態になれば、怒らなくても、勝手に進んでいきます。次のプリントが、もう決まっているからです。
こちらは、そばで見ています。今どこをやっているのか。わからなければ、教えます。
つまり、ことばこが提供しているのは、プリントだけではありません。
- 方法とノウハウ
- 情報
- 場所
- 仲間
- 先生との関係
とくに、先生との関係です。それがなければ、子どもは課題を乗り越えようとするところで、くじけてしまいます。人の心が必要なのです。
家庭でも、同じことです。「見守る」とは、何もしないことではありません。次に何をやればいいのかがわかる枠組みと、頼れる人がいる環境を、整えておくことです。
5. 「何もしない」が、勉強の問題ではないとき
最後に、一つだけ。
何もしない状態が長く続き、元気がない、眠れない、食欲がない、学校に行けない、といった様子が重なるときは、「やる気」の問題ではなく、お子さんの心や体の状態に関わっている可能性があります。それは、私が判断することではありません。学校の先生やスクールカウンセラー、医療機関などの専門家に、相談してください。
最後に
今日からできることは、三つです。
- 「放っておく」ではなく、お子さんの状態を把握しているかを、点検する
- 叱って動かす代わりに、次に何をやればいいかが、お子さんに見える形を用意する(自分で難しければ、人に頼む)
- 頼まれたら、頼まれたことだけ、責めずに手伝う
勉強ができること以上に大事なのは、「自分には、課題を乗り越えていける力がある」という自信です。アドラー心理学では、その力を支えることを「勇気づけ」と呼びます。叱って動かせば、成績は上がるかもしれません。しかし、その力は育ちません。
任せることは、見捨てることではありません。任せるために、いちばん手間をかけるのが、親の仕事です。
塾長コラム ─ 学習塾ことばこ 塾長(国語科教員10年・学習塾個別指導12年)