相談
小学5年生の娘は、何をするにも「どうせ私にはできない」と言います。わからないことがあると、すぐ「お母さん、これどうしたらいい?」と聞いてきます。自信をつけさせたくて、ほめるようにしているのですが、なかなか変わりません。自信は、どうやって育てればいいのでしょうか?
塾長の聞き返し
「どうしたらいい?」と聞かれたとき、お母さんは、どう答えていますか?
つい、「こうしたらいいよ」と、答えを教えてしまいます。そのほうが早いので…。
塾長の答え
1. 自信のない子の、いちばんの特徴
自信がない子には、はっきりした特徴があります。
行動の根拠を、必ず、自分ではないところに求めるのです。
「先生、これ、どうしたらいいですか?」「お母さん、どうしたらいい?」。自分で決めずに、誰かの判断に頼ります。「誰々が言ったから、やった」という言い方になることもあります。
ですから、「どうしたらいい?」に、毎回すぐ答えていると、その子は、自分で決める機会を、ますます失っていきます。親は親切のつもりでも、自信を育てる機会を、先に消してしまっているのです(第8問の「先回り」と同じ仕組みです)。
2. 自信がついたと感じる瞬間
では、自信がなかった子が、自信をつけたと感じるのは、どんなときか。
私は、自分で決め始めたときだと思っています。
- 「これがしたい」と言い出したとき
- 「こうやってやってみよう」と、自分から言ったとき
- 「なんとか高校に行きたい」「何点取りたい」と、自分の意思を、言葉にしたとき
自分の意思を言葉にして、行動に移し始めたとき。そのときの子どもの顔は、はっきり違います。
ここで、周りの大人ができるのは、決める機会を、渡すことです。「どうしたらいい?」と聞かれたら、答えをすぐ出さずに、「あなたは、どうしたい?」と返してみる。ただし、突き放すのではなく、迷っているときは、選択肢を一緒に並べてあげる。決めるのは、本人です。
3. 「やりきり」は、自信に直結します
ことばこが大切にしている「やりきり」は、自信に、直結していると思います。
最初は、ただやるのです。ただ、やる。そのうちに、「できる」という感覚が出てきます。誰かに口を出されてやるのではなく、自分の意思でやろうとしたことが、できた。 この経験を、ちょっとずつ積み重ねていきます。
そのために、ことばこでは、ある程度、親御さんから切り離した形をとっています。経過は、もちろん見ていただきます。でも、見守っていただくのです。この仕組みの中で、子どもは、親の口出しなしで、「自分でできる」「自分の意思で判断して行動した」という経験を、一つ一つ積んでいきます。それが、自信だと思います。
他の塾で、嫌だと暴れていた子
こんな子が、いました(特定されないよう、ぼかしています)。他の塾で、「絶対に嫌だ」とごねて、親が何を言っても、暴れていた子です。その子が、ことばこに来たら、びっくりするほど、普通にやります。こういうことは、多々あります。
理由は、適切な課題を与えているからです。その子が「できる」課題を、渡しています。
嫌がるのは、できないことを、教えられるからです。教えられる時間が続くと、「できない」ことを自覚させられます。しかも、教えられてもわからない、という経験が重なります。「できない」を、永遠にやらされている状態です。
ですから、できることから、始めます。漢字を書く。できる計算を、もっと速くやる。そうした挑戦をします。速くできるようになったら、次のステップに進みます。速くできないうちに、次に進んでも、だめです。
自転車のたとえ
自転車を思い浮かべてください。最初は、補助輪をつけて練習します。補助輪で、十分にこげるようになったら、補助輪を外します。外して、十分に速く、コントロールできるようになったら、手放し運転です。
「教える」というのは、補助輪もつけずに乗らせる、あるいは、乗れるようになったばかりの子に、手放し運転を教える、というようなものです。本人は嫌がります。まずは、乗り回したいのです。乗れるようになった喜びを、散々味わって、その喜びがなくなったら、次に行く。それでいいのです。
できることをやらせてあげれば、子どもは、すぐに変わります。
そもそも、自信って、何でしょうか。
自信は、もともと、そこにあるものだと、私は思っています。最初から、あるのです。やればいいだけのことを、見失っている状態が、自信がない、ということではないでしょうか。自信がない、というのは、できないことに目を向けて、できることを忘れてしまい、動けなくなっている状態なのかもしれません。やるべきことを、見失っているのです。いろいろな言い方ができますが、そういう面もあると、私は思っています。
自信は、ほめられて、もらうものではありません。自分で、積み上げていくものです。1枚のプリントをやりきる。できる。次の1枚をやりきる。できる。その小さな「できた」が、「自分にはできる」という感覚になっていきます。
ことばこでは、わからないところは、先生に聞いてもらいます。「自分で聞く」と決めて行動すること。それも、立派な自己決定です。一人で全部できなくても、かまいません。
4. ご家庭でできること
- 「どうしたらいい?」と聞かれたら、まず、「どう思う?」と返す
- できなかったことより、自分で決めたことに、目を向ける
- 小さな「できた」を、本人が自分で気づけるようにする。(「100点、えらいね」ではなく、「自分では、どう思う?」。第5問)
- 手を出しすぎない(第8問)
最後に
今日からできることは、三つです。
- 「どうしたらいい?」に、すぐ答えず、「どうしたい?」と返す
- 自分で決めたことを、否定せず、そのまま受け止める
- 小さな「できた」を、本人と一緒に、確かめる
勉強ができること以上に大事なのは、「自分には、課題を乗り越えていける力がある」という自信です。アドラー心理学では、この力を支えることを「勇気づけ」と呼びます。
自信は、誰かが与えるものではありません。自分で決めて、自分でやりきった経験の積み重ねから、育っていきます。
塾長コラム ─ 学習塾ことばこ 塾長(国語科教員10年・学習塾個別指導12年)