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つい先回りして手伝いすぎてしまいます|塾長コラム 第8問

相談

小学4年生の娘の持ち物を毎晩チェックし、宿題も「やった?」と確認し、間違いがあれば先に直してしまいます。つい先回りしてしまうのですが、手伝いすぎでしょうか? かわいそうで、見ていられないのです。

塾長の聞き返し

お嬢さんから、「これを手伝って」と頼まれたことは、ありますか?

頼まれたことは、ほとんどありません。私が気になって、先にやってしまいます。

塾長の答え

1. 頼まれていないことを手伝うのは、手伝いすぎです

はっきり言います。頼まれていないことを手伝うのは、手伝いすぎです。

ご家庭の多くが、これに当てはまります。感覚としては、おんぶをしているのに近いです。実際におんぶをしていたら、おかしいと思いますよね。頼まれていないのに、先に何かをやってあげるというのは、それくらいのことです。

たとえば、宿題の声かけ。お子さんから「声をかけて」と頼まれていますか? 宿題を確認するのは、先生の仕事です。学校の先生が「ご家庭で見てください」と親に求めているなら、その仕事は、してもいいと思います。ただ、本来は先生がやるべきことです。

基本は、手伝ってほしいと言われたことを、手伝う。これが大前提です。

  • 本人の課題にどう対応するかを決めるのは、本人
  • 必要な情報は、渡す
  • 「困ったら、いつでも手伝うよ」という姿勢を見せる

これで足ります。

2. 先回りされて育つと、どうなるか

先回りされて育った子は、塾でこんな様子を見せることが多いです。

  • 何でも、先生に聞く
  • 自分では、何も決めない
  • 決断を、すべて人に任せる
  • 「誰々が言ったから、やった」と、人の言葉に従う

自分の頭で判断する経験が、ないからです。判断することに、恐れやブロックがあります。本人は、たいてい無意識です。

一方、先回りされずに育った子は、自己決定が早いです。自分で決めることを大切にしていますし、相手が自分で決めることも、当然のように尊重します。そういう傾向があると感じます(私の実感です)。

3. 手を出したくなるのは、なぜか

では、なぜ手を出したくなるのか。

私は、自分のコントロールの範囲内で育てるのが、いちばんリスクが少ないからだと思っています。少し厳しい言い方になりますが、親自身の安心のため、という面があります。

手を出さずに、その子なりの成長を見守ると、どうなるかは、わかりません。自分のコントロールできない領域に入るからです。宿題をやらずに、先生から呼び出されるようなことも、あるかもしれません。親としての責任を、問われることもあるかもしれません。

全部、自分が管理して、全部やらせていれば、恥をかくことはありません。でも、親が自分のリスクを負いたくなくて、すべてを自分のコントロールの中でやらせれば、子どもは、自分の人生を自分で判断して、挑戦していこうという勇気を失います。 親の保護の下で、全部やっていれば、判断する経験が、圧倒的に足りなくなるからです。

4. ブレーキになるのは、「どんな人になってほしいか」

手を出したくなる気持ちに、ブレーキをかけるには、何が必要か。

何を、いちばん大切にしたいのかを、考えることです。

たとえば、こう願ってみてください。

この子が、自分の意思で、自分の経験と判断で、自分の理性を使って善悪を判断し、自分が正しいと思ったことを、行動に移せる人になってほしい。

そして、それが自分のためだけではなく、周りのことも考えて、みんなのために、自分の判断で行動できる子になってほしい、と。

そう願えるお母さんの子は、本当に、言うことがありません。優しくて、思いやりがあって、周りのことを考えて行動できます。もちろん、「こうやったほうが、もっとできるよ」というアドバイスは、します。でも、それ以外に、言うことがない子が多いです。

そう育ってくれれば、家族もみんな幸せです。社会も幸せです。本人も、いちばん幸せです。

手を出すというのは、その願いと、逆の方向に進むことです。ここを、ご自分の言葉にしてみてください。言語化できれば、迷うことは、少なくなると思います。手を出したくなる気持ちが出てくること自体は、悪くありません。 ただ、何を願っているのか、が、少しずれているのかもしれません。「本当に、どんな人になってほしいのか」を、一度、真剣に考えてみてください。

こうして真剣に聞いてくださるお母さんは、その時点で、もうブレーキがかかっています。100%ブレーキをかけるのは、難しいです。でも、考えること自体が、すでに大きな一歩です。

最後に

今日からできることは、三つです。

  1. 手伝う前に、頼まれたかどうかを、思い出す
  2. 「困ったら、いつでも言ってね」と一回だけ伝えて、待つ
  3. 「どんな人になってほしいか」を、紙に書いてみる

勉強ができること以上に大事なのは、「自分には、課題を乗り越えていける力がある」という自信です。アドラー心理学では、この力を支えることを「勇気づけ」と呼びます。先回りは、愛情からくるものです。ただ、その愛情の向け先を、「安心させること」から、「その子が自分で決める力を信じること」に、少しずつ変えていく。それが、勇気づけです。

塾長コラム ─ 学習塾ことばこ 塾長(国語科教員10年・学習塾個別指導12年)

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